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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)69号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人宮下文夫の上告理由について。

論旨は、原判決には理由齟齬、審理不尽、理由不備の違法があると主張する。しかし、原判決の引用する一審判決の趣旨は、判示租税負担義務が本件売買契約の目的達成に必須的でない附随的義務に過ぎないものであり、特段の事情の認められない本件においては、右租税負担義務は本件売買契約の要素でないから、該義務の不履行を原因とする上告人の本件売買契約の解除は無効である、というにあること判文上明白である。そして、法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠つたに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができないものと解するのが相当であるから、右と同趣旨に出でた原判決は正当であり、原判決には所論の違法はない。所論は、要するに、原判決を正解せざることによる原判決の主文に影響を及ぼさない事項についての主張に過ぎない。論旨はすべて理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高橋潔 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐)

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